Birdis Land's
北 欧 旅 行 記
in June 1996

第二話 「夏至際」

1996年6月21日

朝6時起床。時差ぼけもなく、目覚めもさわやか。本日の予定は今回の旅のメイン、スウェーデン最北部のアービスコ(ABISKO)国立公園までの移動。ストックホルムから鉄鋼石の産地で有名なキルナ(KIRUNA)まで飛行機で移動し、そこからアービスコまでは鉄道の旅だ。アービスコで3泊し、北極圏の白夜と自然を堪能するという寸法だ。今日は夏至祭なので、何かイベントをやってるかもしれない。

お世話になった ホテルTEGNERLUNDEN をチェックアウトし、 ホテル前の公園をちょっと散歩 してからストックホルム中央駅まで歩いて行く。徒歩約15分。空港バスで再び空港へ。5番ゲートの国際線の次の4番ゲート(国内線)で降りる。

搭乗する前に一つやる事があった。どうやら昨日、スウェーデン語1500という本を機内で忘れてきたようなのだ。この本は大学時代に購入したスウェーデン語の基本単語1500が乗っている日瑞辞書(スウェーデンは漢字で瑞典と書く)だ。英語とスウェーデン語の辞書は多いが、当時、(多分今も)日本語とスウェーデン語の辞書はほとんど無かった。この本はコンパクトで持ち運びにも便利で非常に重宝していた。今回の旅行では英和・和英辞書は持ってきたが、スウェーデン語・日本語の辞書はこれしか持ってこなかったので、無くなると非常に困るのだ。

国際線のゲートまで戻り(徒歩5分)インフォメーションで聞いてみるが、そのような忘れ物は届いていないとのこと。受付のおばさんは、当日の清掃係に連絡して聞いてくれたが、やはり無かった。仕方ない。他に無くした場所の心当たりはなかったし、キルナ行きの飛行機の時刻も迫っているし、あきらめよう。

国内線ゲートまで戻ると日本人の団体を発見。私達もお世話になった北欧に強い旅行代理店、フィンセックのツアー組らしい。なんか、北欧まで来て日本人を見るのはいやな気分。日本人団体さんと一緒にキルナ行の飛行機に乗り込む。フリーシートだが、ほぼ満席だった。子供にはコックピット見学とかおもちゃとかいろいろな特典がついていた。子供はいいなー。機内食は 簡単なランチ がでた。

キルナに到着。天気は相変わらず曇り。 雨がふっていたようで、滑走路は濡れていた 。北極圏に近いだけあって流石に寒い。連れ合いはストックホルムで購入したセーターを着込んでも寒いといってぶーぶー文句を言っていた。空港バスでキルナ駅へ。二人で80SKRで、15分ほどで駅に着く。

キルナ駅は赤いレンガ作りの重厚な建物 。アービスコ行きの切符を買った後、時間があるので街を散策。小高い丘を登っていくと街の中心部だ。キルナとは雷鳥の意味だそうで、我々山好きにはそれだけで何となく親しみが感じられる。山好きでない人は知らないかもしれないが、雷鳥は高山にしか生息しない鳥で、日本では3000mクラスの山にしかいない。しかし、キルナではなんと街中に雷鳥がいるそうだ。流石北極圏。街中には雷鳥をモチーフにしたオブジェも見られた。

スーパーで昼飯を買って再び駅へ戻り、 駅のベンチで食す 。日本では見られない乳脂肪分30%のミルクは濃厚で連れ合いの口には合わなかったようだ。あと、北欧定番のDILLSILL(酢漬けにしんのディル風味)やクリームチーズや肉やサラダ、パン、ビール等で昼飯を済ます。ビールはやっぱりカールスバーグだ。

やがて、定刻通り列車がやってきた。前にはドイツ語を話す若者グループが景色を見ながらなにやら楽しげに会話をしている。いい景色に出会うたびにウンデバー(英語でワンダフルの意のドイツ語)と叫ぶのが耳に付いた。あんまりしょっちゅうウンデバーと叫ぶので、ウンデバーは私たちのこの旅の流行語となった。

車窓から見える風景は沼と木とヒース以外何もない。 線路の隣に一本道があるだけで、他は何も無い。雄大だが殺伐とした景色。遠くの山は雪がまだたっぷり残っている。本当に何もなく広い

列車は定刻通り、 アービスコツーリストスタショーン(ABISKOTOURISTSTN)へ 。ここで降りる人は、ほとんどアウトドア向けの恰好をしている。バックパックを背負った若者や家族連れ、老夫婦など。彼らの後に付いて歩いて行き、数分でツーリストスタショーンに着くと、マイストング(majsta^ng、英語ではメイポール 夏至際の時にたてる草花で飾り付けられた棒)をかこんでみんなが楽しそうに歓談していた。今までの殺伐とした風景が嘘のような賑やかさだ。民族衣装を着たおばあさんがストロベリーケーキを食べない?と近づいてきた。夏至祭に食べるのが習わしだそうだ。もちろん二つ返事でOK。ケーキは甘すぎず、手作りの感じがして素朴で美味だった。スウェーデンに来て、ここに来て初めての心のこもったもてなしで、天気は相変わらず曇りだが時々日が差してきて、なにより人々が楽しそうで、我々の心も明るくなる。

アービスコ(ABISKO)はスウェーデンの国立公園のひとつで、冬はオーロラ観測とスキーツアー、夏はハイキングやトレッキング、カヌーなどが出来る。クングスレーデン(KUNGSLEDEN、王様の散歩道)というトレッキングコースの出発地としても有名。北極圏なので夏は一日中太陽が沈まない白夜となる。その基地となる宿泊施設がアービスコツーリストスタショーン。宿泊料の他に、シーツ代に一人85SKRかかるとのこと。シーツか寝袋をもってくればいいらしい。部屋はとてもシンプルな作りで、シャワーもトイレも電話も共同。地下にはサウナがあった。ホテルというよりユースといった感じ。

さっそく近くを散策。ツーリストスタショーン内のレセプションと、離れにあるナチュールーム(NATURUM、英語でNATUREROOMの意)というアービスコの自然を紹介している施設でガイドツアーを受け付けている。掲示板に貼り出してあるツアーは思ったより少なく一日一種類程度だった。直接聞けば他のツアーを紹介してもらえるかもしれない、と思いナチュールームに行って聞いてみると、明日バードウォッチングツアーがあるとのこと。朝6時にナチュールーム前に集まればいいらしい。資料をいろいろもらい、鳥の本と地図を買う。ツーリストスタショーン内ではクレジットカードが使えたが、ナチュールームではカードが使えなかった。

ここで、バウチャーをレセプションに全て渡してしまたことに気付く。これから先の宿泊地の割引パスが全て綴ってある大切なバウチャーだ。慌ててレセプションに戻り、受付のおばさんに言ったらあちこち探して見つけてくれた。おばさんは「貴方達にもっと泊まっていってほしかったからよ」と冗談を言いながら、ウィンクしてバウチャーを返してくれた。

夕食はビュッフェ(いわゆるバイキング料理)スタイルでローストした肉や魚料理が中心だった 。AUSSIEWINE が飲みやすく美味しかった。疲れのせいか部屋に帰ったら猛烈に眠く、寝てしまう。夜10時半頃、連れ合いに起こされる。下の方でなにやらやっているとのこと。階下に降りてみると 生のバンド演奏をしていた 。外では何人かがダンスをしていた。もう深夜のはずなのにまだ明るい。そう、今日は夏至祭なのだ。どうやら夏至祭のハイライトのダンスパーディーのようで、 みんな楽しそうに踊っている 。時刻は夜の11時半ころなのに、太陽は日本の夏の5時くらいの位置にあってまだ十分明るい。天気は大分回復し、晴れ間が多く、湖の向こう側のなだらかな山なみがきれいだった。気温も昼より温かいくらいで、半袖でもなんとか大丈夫なほど。やがて夜中の12時を迎えた。 深夜の太陽(ミッドナイトサン)を撮影 し、12時過ぎまで真夜中の太陽と演奏とダンスを見ていたが、寒くなったので部屋に帰り再び寝る。


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