Birdis Land's
北 欧 旅 行 記
in June 1996


第九話 ムーミンの故郷

1996年6月28日

目が覚めると既に日付は変わっていた。どうやら昨晩はスメルゴスボード食べた後、眠り込んでしまったらしい。豪華なクルーズが文字通り夢になってしまったのはちょっと残念。寝起きの冴えない頭でデッキに出ると、視界に飛び込んできたのは幻想的な景色。 暁の薄光の中、数え切れないくらいの小さな島々の間を縫うように進む船からの景色 の美しさに、しばし我を忘れて見入る。

よく見ると大抵の島々の 海岸には小さな桟橋とか小さな小屋が建っている 。大き目の島には大きい別荘。ちっちゃな島には可愛い建物。サウナ小屋らしき小屋も見える。スウェーデン系フィンランド人トーヴェ・ヤンソンの書いたムーミンシリーズにはしばしば桟橋とボートが登場し、キャラクター達が無人島に渡って冒険するという話もある。フィンランド人にとって海や湖の島にボートで渡って夏を過ごすというのは一般的なことなのだ。トーヴェ・ヤンソンも無人島に小さな小屋を持っていて、夏の間は一人でボートで島に渡り、何日か暮らすという。そういった予備知識はあったが、現実に無人島と小屋を目の辺りにすると、ムーミンの故郷に来たんだ、と実感する。

やがて船はフィンランドのツルク(TURKU)港に入港。 側面に赤いラインのバイキングラインの船がちょうど出航するところ だった。

パスポートコントロールもなくフィンランドに入国。相変わらず国境を超える感覚が無く、また換金するのを忘れる。到着したはついたはいいが、トイレに行き、ちょっと休憩しているあいだに周りの客はさっさとバスやタクシーに乗り込んでいく。私達は内陸部のタンペレ(TAMPERE)まで移動する予定なのだが、交通手段は詳しく調べてなかった。周りの案内やら看板やらを見渡してみるが、表記はフィンランド語オンリーで英語が書いてない。スウェーデンでは公共施設は大抵英語が併記してあったし、たとえ英語表記が無くてもスウェーデン語やノルウェー語ならある程度解読出来るので言葉に苦労することはほとんど無かった。しかし、フィンランド語は文字こそ馴染みのアルファベットを使うが、ゲルマン語とは全く異質のフィンウゴル語族で類推すら出来ない。ここにきてはじめて異国にきたんだという感じがする。

ターミナルの受付は英語が通じたので情報収集。換金は町まで行かないと駄目との事。そこでツルク市内の行き方やタンペレまでの行き方を詳しく教えてもらった。ツルク市内行きのシャトルバスはもう出てしまったが、タンペレ行きのバスがあと4分で出るらしい。シリヤラインの乗客にはスペシャルプライスが適用されるそうだ。チケットはカードで買える。時間がないけどどうします?と聞かれた。迷ってる暇は無さそうなので即決でお願いした。連れ合いを呼んでバス乗り場まで150Mを走り、出発しかかっているバスを止めて何とか乗り込む。間一髪だった。

タンペレ行きのバスは長距離バスらしく、車内は大きくてゆったりとして快適。バスの運チャンは英語が分からないようでちょっと不安だが、基本的には親切そう。途中、連れ合いが時刻表をもらい、やっと到着時刻が分かる。やがて街中のバス停に到着。みんな降りるので、乗客の一人に、駅に行きたいのだが、ここで降りていいのか聞いてみる。英語が通じたのは良かったが、駅までの道はよく分からないそうだ。運ちゃんは荷物を降ろしていたのでどうやらここが終点らしい。バスを降りたはいいが、またまたどうしていいかわからない。現地通貨がないとトイレにもいけない。連れ合いがバスターミナルのインフォメーションで地図をもらってきた。と、さっき道を聞いた女性が戻ってきた。わざわざ駅までの道を他の人に聞いてきてくれたそうだ。どうやら歩いていける距離らしい。トイレに行きたかったのですぐにでも両替したかったのだが、インフォメーションでは換金出来なかったので仕方なし徒歩で駅に向かう。

15分位でタンペレ駅に到着。駅でも換金出来なかったので、連れ合いに荷物番をしてもらって駅前の周りを歩きまわり、ようやく銀行を見つける。テナントビルのようだが、看板も何も出ていないので最初は銀行と分からなかった。カウンターで日本円の換金を頼むが、日本円を換金する機会はほとんどないらしく、オペレータの人は「コンピュータに登録されていないので手作業でやります」と言ってどこかに電話でやり方を聞きながら換金してくれた。やっと換金出来ると、すごく丁寧に紙幣の数をゆっくり数えてくれた。親切なのはいいが、こっちはトイレに行きたくて急いでいるのに。

1万円を無事換金。荷物をコインロッカーに預け、トイレにも行き、今晩の宿泊地ヘルシンキ(HELSINKI)までの切符を買う。週末で込んでいるので指定席を買えと言われた。ようやく一息ついたが、切符を買うと現金が少なくってしまったので、さっきの銀行にもう一度行く。2回目なのでもうスムーズにいくだろうと思っていたが、さっき換金してくれた担当者はいなくて、別の女性が出てきた。この人がとても可愛いい女性で、多分今回の旅で会った北欧人の中で一番だといえるくらいの人だった。いささか緊張しながら、「また換金してほしいんですけど……」と言うと、ちょっと困った顔をした後、笑顔で「やってみるわ」と言ってマニュアルを見ながら一生懸命換金してくれた。分かれ際、ちょっとたどたどしいけれどきれいな英語で「どうぞフィンランドを楽しんでくださいね」と言ってくれた。

タクシーで私立図書館に移動。 雷鳥をモチーフにした奇抜なデザインの建物 で、中にムーミンシリーズの博物館がある。わざわざタンペレに立ち寄ったのは、ここに行くためだ。博物館はこじんまりとした、しかし綺麗な展示だった。ムーミンのストーリーに出てくるシーンのジオラマ(模型)やマックを使ったムーミン屋敷の案内ソフトなどが目を引いた。時間があればゆっくりしたかったが、ヘルシンキへの電車の時間があるので2時間そこそこできりあげる。

一階のショップでグッズ類を買いあさる。時間はもう2時30分。3時の電車にのらなければならない。駅方面へ歩きながらタクシーを探すが、見つからない。大きなバス停でバスがとまっていたので駅行きか聞くとそうらしいので飛び乗る。普通の市バスみたいだったが、バスの乗降口は日本のバスより低く、間口は広くてバス停の乗り場の高さがほとんど同じになっていた。車椅子やハンディキャップのある人への考慮だろう。10分前に駅に着いた。ぎりぎりセーフ。

電車の定刻近くにホームに着いたが、乗り場の表示も次に来る電車の案内も何もなく、みんなバラバラにホームに立っている。 やがて定刻10分遅れで電車が入線。皆一斉に自分の車両に歩き出した。私達の車両は一番後ろ。車内はかなり混んでいる。買ったパンで遅い昼食を取ったが、日本の通勤列車の中で飯を食う感じだった。なんかフィンランドに着いてからはらはらのし通しだ。

ヘルシンキに到着。 街の建物の色がカラフル(といってもヨーロッパらしい落ちついた雰囲気だが)で、ストックホルムより活気がある感じ 。駅前のTAXIとかいてある看板の前で待つが全然こない。10分ほどして、男の人が、ここは乗り場じゃないと教えてくれた。近距離タクシーの乗り場は出口を出て左のバス乗り場のほうにあった。

ヨーロッパではベンツのタクシーも普通に走っているので乗りたかったが、私達のひとつ前の客がベンツに乗って行った後、次に来たのは日本車だった。5時25分頃ホテルに到着。急いでチェックインし、荷物を部屋に置きにいく。内装がかわいらしい小さいホテルだ。ここで、ニフティで知り合ったむーみんぱぱさんことO氏と待ち合わせ。O氏は仕事の関係でフィンランドに住んでおり、ニフティのフォーラムでも精力的な活動をされていた。私達が北欧を訪れると知って、声をかけて下さったのだ。待ち合わせ時間の少し前にO氏が奥様と到着。ホテルの向かいF1ショップで時間調整をしてくださったみたいだ。

O氏の案内で市内観光。市電で市内を一周しながら主だった場所を案内してくれた。流石に土地に住んでいただけあり、ツボを押さえた案内で、私達はすっかりおのぼりさん状態になって説明を聞きいっていた。それから、有名なテンペリアウキオ教会(TEMPELIAUKIONKIRKKO)へ。 自然の地形を利用して建てられた岩を掘り下げて出来た教会 だ。教会という場所はあんまり馴染みがないが、壁面の剥き出しの岩盤が神々しい雰囲気を醸し出していた。

その後バスと市電を乗り継ぎ、あらかじめ予約していただいていたホテルのプライベートサウナを浴び、プールで泳ぎ、そのまま夕食に。至りに着くせりのコースだ。O氏に予約していただいたレストランでは フォークダンスの夕べと称し、民族ダンスをやっていた 。もちろん食事も素晴らしく、 サーモンのステーキ ノロ鹿の燻製 が美味。4人でビールとワイン2本空けてから下のバーで飲む。ウォッカを2杯ごちそうになり、すっかりいい気分で12時頃まで飲んだ。今回の旅でのアルコールはほとんどビールだったので強い酒をこれだけ飲んだのは久し振りだ。外はうす暗いが、日没直後くらいの明るさ。タクシーを呼んでもらい、O氏のおもてなしに感謝しつつホテルに帰る。


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